私はほどほどの田舎生まれ&育ちで、成人してからは20年ほど東京に住んでいました。心はすっかり東京人(爆笑)。しかしあるとき東京に住む必要性を感じなくなり、準田舎的な場所に移住しています。
最近コロナ禍が原因で、私と同じく東京から田舎へ移住する方が増えていると聞きます。#東京脱出というtwitterのハッシュタグが話題になるくらいですからね。
ご存じの通り、田舎は都会には無いたくさんのメリットがあります。しかし移住経験者の私としては、メリットと思われやすいことの内、1つだけケースバイケースなこともあると考えます。
それは「(都会は空気が汚いけれど)田舎は空気がめちゃくちゃ綺麗」ということ。
もちろん実際に空気が綺麗な田舎はたくさんあることでしょう。しかし都会に住んでいた人が、田舎独特の空気になじめないことがあるのもまた事実と思います。本ページでは、田舎には田舎ならではの空気感がある、ということを都内在住(特に23区内)の方に向けてご説明したいと思います。
東京から地方に移住をご検討中の方は是非ご一読を。
田舎の空気が綺麗は、時に幻想なこともある
田舎の空気に関してのイメージは人それぞれかもしれません。ステレオタイプなイメージでは、緑が多くて排気ガスにも汚染されておらず、空気もうまい!……という感じでしょうか。
しかし現実には、東京ではあまりない、田舎ならではの臭いがすることもあるのです。
田舎の畑では野焼きがスタンダード
田舎と言えば田んぼや畑があります。それらでは必然的に農業ゴミ(例えば籾殻)が出る訳ですが、可燃ゴミに出していては大変ですので燃やす方が効率的です。これらの屋外での焼却を野焼きと言います。
野焼きは土壌改良、防虫なども兼ねているため、必要な行為として昔からずっと行われてきました。本来野焼きは法律・条例で禁止されているのですが、農家さんは例外として認められているのです。
この野焼きの煙が周囲に拡散し、何となく煙いというような臭いの元となることがあります。
特に新米の季節である9月~10月になると、何となくどころでなく、明確に感じられることもあります。例え畑から数キロ離れていても、煙は辺り一帯に広まることもめずらしくありません。
野焼きの臭いで季節を感じるのは実は“田舎あるある”です。しかしこの臭いに慣れていない都会の人にとっては、強く不快に感じる方も多いでしょう。実際のところ、野焼き問題は全国的な問題としてメディアでも取り上げられています。
平成28年度に全国の地方公共団体に寄せられた苦情7万47件のうち、野焼きが原因の苦情は1万2576件(約18%)と最も多く、野焼きは全国的な問題といえる。
【関西の議論】野焼きは「違法」か…農地とニュータウン混在の自治体の悩み
洗濯物などに配慮してか、あえて夜中~明け方に燃やしていることもあります。
庭でゴミを燃やしていることもある
2000年の廃棄物処理法改正で、廃棄物の野外焼却が全般的に原則禁止されました。しかし家庭ゴミを燃やしているケースは現実問題としてまだあります。
本来、落ち葉を焚くような軽微な焼却以外は違法行為。しかしこの画像のような家庭用の焼却炉とか普通に売っているくらいですので、軽微では済まないケースも多いと考えられます。ドラム缶で焼いたりも見ますね(汗)
昔からの慣例として行っていたことが完全に無くなるには、もっと時間がかかるのでしょう。実のところ、田舎度合いが高いとゴミ収集所が遠いという問題があります。そのため家庭で燃やせるものは燃やした方が良いと考える人は無くならないようにも思います。
ゴミを燃やす際、特に水分を多く含むものは大量の煙が出るのは避けられません。また、化学物質、プラスチック、塗料などを含んだものを燃やすと、有害なダイオキシンなどを含む強烈な悪臭のする煙が出ます。
庭が広ければまだいいですが、東京なら即通報レベルの煙でしょう。
田舎だからこそ、当たり前なこともある
東京では非常識でも、田舎では当たり前に行われていることはたくさんあります。
田舎レベルが高まるごとに、庭木も多くなるため落ち葉や枯れ枝も増えます。雑草もまた凄い。これらをわざわざゴミに出すより燃やした方が楽です。有料ゴミ袋の地域であったらなおさらでしょう。ひいては草木を庭で燃やすのは普通な地域もあります。
東京よりも住宅が離れているので、庭でのバーベキューも当たり前です。春に散歩をすると、そこら中のお宅でやっているのを目にしますが臭い(と騒音)はやっぱり広がりますね。同じ理由で七輪・燻製・ピザ釜などの利用機会も多くなるでしょう。
東京では希な薪ストーブ・ペレットストーブも、田舎の新築の建物では住宅街でも普通に設置されます。寒冷地でなくてもです。特に薪ストーブは臭わないというふれこみですがとんでもない。実際には気をつけても焚き付け時には煙が出ますし、逆に気をつけないとひどい煙になります。風向きによっては煙が地上まで降りてきて周辺一帯を臭わせることも。さらに田舎だと暖炉もありますね。
私は見たことがありませんが、炭を作る炭焼き小屋なんてものも田舎ならではらしく、煙被害に繋がることもあるようです。
特に田舎の地域ではかまどや薪風呂・囲炉裏(外に排煙タイプ)もあるようですね。見ている分には情緒あふれますが、隣家で近かったら迷惑になるでしょう。
東京では煙が出るようなものは御法度ですが、田舎では当たり前です。
工場や焼却施設が空気を悪くすることもある
田舎すぎないほどよい田舎は、広い土地+流通のアクセスが絶妙にマッチするのでしょうか。都心には無いような工場や焼却施設・廃棄物処理場などが建設されることがあり、空気に影響することがあります。
もちろん大気を汚染する可能性がある場合は、法律に基づいた高い煙突で排煙することが必要です。そのため地上に降り注ぐころには拡散され薄まっており、人体に影響が少ないようにはなっています。
とは言え燃やしていれば煙の粒子(PM2.5等)が出ることは事実。拡散しても消えるわけではないので、周辺の空気感に全く影響がないというわけではないでしょう。
結論としては環境次第!田舎だからといって空気が綺麗とは限らない
東京はたしかに幹線通り沿いは排気ガスの臭いで空気が悪いです。そうでなくても特に山手線内は交通量も多いです。駅近は雑多な臭いが取り巻いているかもしれません。しかし閑静な住宅街に住んでいた頃は特に臭いは感じませんでした。
対して田舎は、本当に素晴らしく空気が良い場所もあるでしょう。ですが先ほど書いたいずれか、または複数があてはまれば、とたんに空気が悪くなることもあり得ます。
ですので「都会は空気が汚い。田舎は空気が綺麗」とは一概には言えないことです。結論としては、住まう場所の環境次第だと思います。
東京に長年住んでいた方が都外に移住するなら知っておきたい「空気感」の違い
田舎も一概に空気が綺麗とは言えないこともあると書きました。じゃあ田舎も都会も同じじゃないか、というとそうでもないように思います。
田舎も東京も両方経験している私としては、それぞれの空気感に違いがあるように感じます。この違いが、もしかすると肌に(鼻に)合わない人もいるかもしれません。
都外に移住するのであれば、その空気感の違いを認識しておかれることをお勧めします。
東京と田舎の空気の質の違い
先ほどもちらりと触れましたが、東京は交通量が多い地域は排気ガスで空気が悪い場所もあります。繁華街近くなら雑多な臭い。住宅街なら家同士が近いので、料理等隣家から流れる生活臭がすることもあります。
対して田舎の臭いは先ほども挙げたとおり、野焼き・薪ストーブ・ペレットストーブ・ごみ焼却・炭焼き等など。つまりは何かを燃やす系の臭いがメインです。何が原因かは分からないことも多いですが(おそらく野焼きが多いとは思いますが)、ちょっと燃えたような煙い臭いは地域によってはしょっちゅう発生することもあります。
私は約20年の東京暮らし&仕事も含め東京はいろいろと巡りました。そんな私の体感としては、やっぱり東京と田舎は空気の質が違うように感じます。
東京は住まいを転々としましたが、田舎の方はそういろんな場所に住んだわけではありません。ですが複数の人の話を加味しても、野焼きっぽい煙の臭いは“田舎あるある”なようです。
臭いには個人差があり、生まれ育った環境は大きい
臭いの感じ方は、Aさんは気になるけどBさんは気にならないなど、個人差が非常に大きいもの。中でも生まれ育った環境は非常に大きく、かぎ慣れてる臭いは意外と気にならないものです。
例えば東京で生まれ育てばその場所特有の臭いは当たり前で、生活していて何も違和感は感じません。幹線道路沿いに住んでいるわけでも無ければ「東京はやっぱり空気が汚いなぁ」などと日頃感じている人は少ないのではないでしょうか。
同じように、田舎で生まれ育てば野焼きの臭いは当たり前。私もほどほどの田舎生まれなので分かりますが、野焼きの臭いがなつかしく感じる人すらいます。子どもの頃は野焼きなんて知りませんでしたので、その焦げたような臭いがこの世の常識と思っていました(^^;)。
東京暮らしが長い人は、田舎の空気に耐性が無い場合もある!?
要は生まれ育った場所の臭いは慣れていて耐性があるですね。ということは生まれも育ちも東京の閑静な住宅街という方は、田舎の空気の質に慣れていないので耐性がない=臭いが気になるケースも当然あると思います。
特に東京23区内なら野焼きもほぼ無いでしょうしね。この臭いの違いに耐えられずに東京にとんぼ帰りとなると大変ですから、東京脱出の移住は慎重に考えたいところです。
東京の隣接県でも空気環境は変わる
じゃあ、田舎じゃ無くて、東京の隣くらいのちょい田舎か準都会ならそれほど変わらないかな?
……と思うところですが、実際にはそう単純な話ではないと思います。都内の会社に在籍していてテレワークできる方は、たまにの電車通勤が可能な隣接県も候補に入れている場合もあるでしょう。
例えば神奈川・埼玉・千葉・茨城・群馬・栃木などですね。これらは東京寄りなら準都会~準田舎と言えるほどですが、やっぱり東京(特に23区)と比べると同じではないように思うのです。
その理由は、畑はどこにでもあるからです。東京23区(プラス一部の市)を離れると、畑は一気に増えます。実際に東京のスーパーで野菜や米の産地を見れば、千葉・茨城・埼玉・栃木など普通に見かけますよね。畑があれば、当然野焼きの可能性はあります。
畑と多少距離が離れていても、風向きによっては何となく焦げ臭いこともあり得るでしょう。
そもそもは煙に対する意識の差の違い
加えて、煙に対する意識の差があると思うのです。東京の住宅街では20坪~30坪くらい土地が多いので、そんなところで何かものを燃やせば即座に通報されかねません。
よって東京のバーベキューや薪ストーブは、23区外の郊外か、環境に恵まれた広い土地の家か、そうでなければ太めな神経の持ち主でしょう。
対して都外の県でのそれらの容認度は、東京とは明らかに違うように思うのです。私は東京に1時間もあれば通勤可能な程度の準田舎在住ですが、住宅街でもバーベキューや薪ストーブはごく普通です。庭でものを燃やしているのも散歩中よく見かけます。
東京と他県では、煙や臭いを発することに対する大きな意識の違いがあるもの。そう考えておいた方が良いかもしれません。
移住した私の体験談
最初にも書きましたが、私はそこそこの田舎生まれ&育ちで、東京のあちこちに約20年住み、その後準田舎に移住しました。
田舎特有の空気感にはブランクはありますが、生まれ育った環境なので慣れているはずです(たまに実家に帰ると懐かしい臭いを感じる程度)。そんな私が準田舎に移住した感想も併せて書いておきますのでよろしければ参考になさってください。
準田舎って!?
ここでの準田舎との前提として、東京23区なら1時間前後くらいで行ける、東京にほど近い場所のことです。そもそも田舎の定義は曖昧で人それぞれですが、田舎!というほど田舎ではないですし、かと言っても都会では絶対無い。それでいて準都会とも言えないので消去法で準田舎かなと。
東京から見たら東京以外は田舎と分類されてしまうかもしれませんが、なるべく客観的に見ても準田舎の分類は妥当かなと思っています。
久々の空気感はなつかしかったが……
私の場合は慣れていたので、まあこんなもんだろうなという程度でした。しかし、洗濯物を取り込むとなんだかタオルが煙くさいことがたまにあります。加えて「今日はなんだか特に煙いから晴れてるけれど洗濯は止めとこうかな」と思うことも。
東京暮らしも長かったので、やっぱり感じることは感じるんですね。ちなみに東京に住んでいたころはこういったことは全くありませんでした。
あとは似たようなことですが、一日中外出して帰ると髪や服についた煙の臭いがふと気になる事もあります(特に秋冬)。室内にいれば気になる事はそれほどありません。
私もきれい好きな方なので分かりますが、潔癖ぎみの方には洗濯物の臭いはかなり気になると思います。
9~10月のみかなり気になるレベル
9~10月という季節は、新米の季節&各種収穫の季節なので農業ゴミが多く出るのでしょう。実際畑を見ると、籾殻を燃やしているのが見て取れます。そのためか、しょっちゅう煙く、時折強めの臭いが周辺一帯を覆います。
最もひどい臭いがするのは夕方~夜中~明け方。おそらく洗濯物に考慮している(クレームを避けるためかもしれません)のか夜中に燃やしているようで、風向きなどによっては窓も開けられない臭いになることもあります。しかもこの時期はしょっちゅう。
24時間換気がついているので、部屋の中はイガイガした空気になりさすがに気になるレベル。仕方がないので長らく使っていなかった空気清浄機を引っ張り出すと、その時ばかりはゴーゴー反応します(空気の汚れで強弱が変わるタイプ)。
原因は1kmくらいのところに大きな畑があるのですが、そこなのでしょう。もっと近所の方はどんだけひどいの!?と思ってしまいますが、これがこの土地の昔からの空気なんだろうなぁと思います。
郷に入っては郷に従う覚悟が必要
野焼きがひどいといっても、農家さんにとっては必要(?)ですし、法律・条例でも例外として認められています。例外と言っても一定以上の被害実態があれば行政も注意してくれますが、なかなかそう簡単に解決する問題でもありません。
それに地元の野菜もありがたく食べてますし、個人的には文句を言うつもりはありません。
その他、工場や焼却炉の臭いなり、薪ストーブの臭いなり、法律に基づいて設置されたものは止めてもらうことはできません。例え法外のゴミ焼却などであっても昔から行っていた慣例を改善してもらうのは相当な労力が必要です(証拠集めなど)。
田舎には田舎の環境があるもの。思い切って移住するなら、郷に入っては郷に従うという覚悟も必要なのかなと私は考えます。
私的には東京の閑静な住宅地が一番空気が綺麗だったというオチ
合計10箇所以上の場所で暮らした私が、一番空気が綺麗と感じたのは意外にも(?)東京の閑静な住宅地でした。駅までの10数分、ほぼずっと住宅が続くような地域です。
車もご近所の方ばかりでたいして通らず、ましてや近くで何か燃やされることもありません。においとして感じるのは、時折香る季節の花の匂いや、散歩をしている途中のご近所さんの晩ご飯のいい匂いくらいです。
幹線道路近くを避け、住宅街に限定すれば東京の空気感もそう悪くないものなんですよ。だからこそ、それが常識で育った人には田舎の空気がなじめない事があると思い本記事を書いた次第です。
東京の住宅地の空気が特別に綺麗というよりも、何も不快を感じなかったと言った方が近いかもしれません。
まとめ
今年の冬にコロナが再び大流行する可能性もある現在、地方に移住するならタイミングは今なのかもしれません。しかし空気の違いは、日常生活に大きな影響を与えます。
東京在住時は、帰省したときに「ああ、この臭い」と思い出していた田舎の空気。それが移住して日常になってくると、やっぱり臭うなと思うんですよね。東京から移住するには、こういった田舎の臭いも含めて受け入れるくらいでいた方がよいのかもしれません。
コロナ禍の冬が始まる前にと焦って移住して「知らなかった。東京に帰りたい」とならないように、移住は慎重に検討したいところですね。
賃貸の一人暮らしだったらまだいいですが、家族がいたり、家の購入の場合は簡単に取り返しがつきませんので。
コメント
野焼きの苦情件数に関する数字の解釈ですが、おそらく正確でないと思われます。
野焼き=農業での野焼きと解釈されているようですが、実際は農業以外の野焼きも多く含まれていると思われます。
総務省の元データ
https://www.soumu.go.jp/main_content/000519412.pdf
の12ページを見ますと、農業に関する苦情件数は1470件であり、全体の2.1%です。
にもかかわらず、全体の18%を農業による野焼きが占めるというのは、無理がある解釈です。
参考までに、令和3年のデータ
https://www.soumu.go.jp/main_content/000783665.pdf
の18ページが分かりやすいですが、個人の野焼きと農家の野焼きは分けられております。
元記事の産経新聞の記者が間違った解釈をしていると思いますが、「農業、野焼き」などのワード検索でこちらの記事が上位になっていましたので、こちらにもコメントさせていただきました。
自分の解釈の方が間違えているかも知れませんが、再度元データのご確認をお願いいたします。
はじめまして。
ご教示いただきありがとうございます。
資料を拝見したところ、おっしゃるとおり野焼きの苦情の内、農業が占める割合はとても低い。つまり個人に対する苦情が多くを占めていると読み取れました。
改めて思い返せば、田舎では住宅地の近くに家庭菜園の土地がよくあり、焼却している様を目にします。
煙も近いので、苦情に結びつきやすいのかなと思いました。
該当箇所は誤解を招く表現だと思い、記事を修正・補足しました。
この度は有益な情報をありがとうございます。